平成の頃です。生後間もない捨て猫の赤ちゃんを子供たちが小学校に連れて来ました。当時、朝の交通ボランティアをしており、たまたまその現場に居合わせ、うっかり猫を飼ったことがある人を知っていると口を滑らし、近藤先生の所に運ぶはめとなりました。先生は以前にも傷ついた猫を何匹か育て上げ、かつ生き物には命の限りがある事を経験しており随分と躊躇されていました。ただ、目の前にある小さな命を前にして、結局、諦めてくれました。
その子猫は「チャッピー」と名付けられ、捨てられた後遺症もなく、日増しに大きくなりました。とてもヤンチャな親分気質で、座敷猫になる様子もなく外に出たがります。何処にでもいる日本猫の雑種です。様々な獲物を捕まえ意気揚々と見せ、周囲をくまなくパトロールし、時間になると食事に戻り睡眠をとるという、勝手気ままが本能なのか決められた日課を身につけていました。
負けん気が強く、去勢手術はしたものの、自分のテリトリーに入る猫がいると、唸り声を上げ威嚇し、去らないと取っ組み合いが始まります。大怪我が絶えず、近所の獣医さんの常連になりました。結局、それが命取りとなり、猫同士の喧嘩で菌が脊髄にまで及び、程なく病で亡くなりました。
ところが、その日から別の小猫が事務所に入り込みます。近所で育てていた数匹のなかの一匹で、生前のチャッピーにいつも追い払われていたのに、いつの間にか居座ります。引っ越して来てから14年の歳月が過ぎました。17歳でしたので人に換算すると相当の高齢とのこと。若い頃はリード無しで一緒に散歩できる(先生と)猫でしたが、晩年はそれもなくなり、他の猫との接触もほとんど無く、家の前に招き猫のように座っていました。
ただ、通りがかりの人に色んな名前で呼ばれ可愛がられていました。その「ミミ」が亡くなりました。特に苦しい様子も見せずに、最後の2日間は下の世話が自分で全く出来ずにゲージで囲われ、そこで横たわり息を引き取りました。猛暑が続く夏の盛りでしたが葬儀を済ませました。
ミミは寿命を全う出来たのかなと思いつつ、今でもすぐ側にいるような感じで、ふと夜空を仰ぎ見ると8月20日の満月が佇んでいました。 |
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