21世紀ADACHI芸術文化共同制作プロジェクト  代表 近藤 直子  
 

 本日はいまだ難しい状況の中、お越しいただき有り難うございます。思い起こせば、新型コロナウイルス第1波、未知の感染症に恐れを抱き、3人ほどでパート練習を始めました。その後、飛沫の実証実験のデータを世界中から集め、マスクを研究し、ソーシャルディスタンス、換気、消毒、検温と皆の努力で今日まで無事に練習を行ってきました。
 今回、合唱は偶然にも「マタイ受難曲」という重たいテーマを選曲しました。巨匠バッハの代表的な傑作です。感染自体は決して何の罪でもなく差別された事実、また多くの方が亡くなられた事実、コロナ禍において生活が困難に陥った多くの方々、失望から自らの命を諦めてしまった若者、その一方で今も更に広がる社会経済の格差。政治や医療の在り方。今日の様相は、まさにキリスト時代の利権争いや民衆心理による受難と重なるようです。しかし「マタイ受難曲」の大きなテーマは大いなる愛による赦しであるように、希望です。人は自然と共存し、芸術や歴史、文化に支えられているものです。
 今改めて、人間らしく生きるには?と問いかけずにはいられません。最後にこの舞台の実現に向けご尽力頂きましたムジカ・サクレ・トウキョウ、共催及び共演者の皆様、そして歌うことの情熱を持ち続けた合唱団とそのご家族、お客様に深く感謝申し上げます。

 
 
 
歓喜の演合唱団とは
 
  2001年1月「21世紀・新春 歓喜の演」と題して邦楽、狂言、合唱によるコラボレーションで公演の産声をあげる。翌年11月には<足立区制70周年記念事業>としてベートーヴェン作曲「交響曲第9番 ニ短調 作品125」(略称「第九」)を足立シティオーケストラと共演。更に2004年には<ギャラクシティ開館10周年記念事業>でミュージカル「花の都のラララ」を実施。以後、「聲とCHORUS」「人間賛歌 狂言と合唱]」などコラボレーションの事業を展開。一般公募による公演も特長で、私達の日常の中に人間として心豊かな生活の実現と活力のある地域社会との繋がりを作る。昨年はコロナ禍で公演が止む無く延期となったが、本年は可能な限りの感染対策を実施し、第20回の節目の公演となる。合唱団も昨年12月よりバッハ作曲「マタイ受難曲」口語日本語版の練習を始め、メンデルスゾーンに発掘された西欧音楽の大曲に臨む。